義理母の介護をしたくない・・・。うまくいかない理由や対策と妻の金銭請求権について

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嫁と姑は仲が悪いと言われますが、介護の問題が加わると穏やかな家庭が一気に崩壊するほどの問題になることも少なくありません。

この記事では、そんな義理母の介護がうまくいかない理由や上手に乗り越える対策、そして介護をした妻に新たに認められた金銭を請求する権利について紹介します。

義理母の介護がうまくいかない理由

自分の親の介護なら「育ててくれた恩に報いる」という考えで介護を受け入れるケースがよくありますが、義理の母となるとそうはいきません。

「自分は夫や子どもに尽くす義理はあるが、義理母には恩も義理もない」
「自分のキャリアや人生を犠牲にする理由がない」

というように、介護を拒否する妻が多くいますし、介護をしている妻の本音も義理母に対しては厳しいというのが現実。強いストレスを感じている人も少なくありません。

どうして義理母と妻ではうまくいかないのか、理由を見ていきましょう。

不仲

そもそも、嫁と姑の仲が悪いケースがよくあります。

昔から「姑の嫁いびり」という言葉があるように姑が嫁に辛く当たることがありますね。

その悔しさや不快感を抱いている嫁が「あんな意地悪をされたのに、どうして世話をしなければならないの?」と怒りを露わにすることがしばしば。

いびられ、いじめられている妻が「夫の母親」という以外なんの繋がりも義理も恩もない場合は、時間を思うように利用できなくなる介護を無償で受け入れる気になれるはずがありません。

嫁姑間に不穏な空気が流れている場合は「義理母の介護を妻がする」というのは難しいでしょう。

例え介護をしたとしても非常に大きなストレスを妻が抱えることになります。

妻ひとりで介護する

介護の現場では、妻が義理母を世話するというケースがほとんどで、夫や他の実子が日常的に協力する例は稀です。

これも妻が義理母の介護を拒否する大きな理由のひとつ。

24時間365日、妻がひとりで義理母と向かい合い、外出もままならない状況下、一般的な家事とは別に、義理母に合わせた食べやすい食事を準備したり、ベッドを整えたり、徘徊するのを止めたり、怪我をしないよう配慮したり、お風呂や下の世話まで付きっ切りで行うということが、どれほど厳しい日常か想像できるでしょうか。

一日中呼びつけられ続けたり、料理をけなされたり、配慮が足りないと言われたり、認知症が理由で義理母が勘違いすることも多く、言葉によるいじめや罵倒も珍しくありません。

誰にも労われず、報酬ももらえず、拘束され続け、望まないことを強要され続けるなんて誰だって拒否しますよね。

しかも、相手にいびられた経験があって、夫の親という以外の繋がりがない相手だったら「介護する義理はない!」と放り出して当然です。

そんな状況が目に見えている場合は、妻が快く介護を引き受ける訳がありません。

妻の仕事や娯楽が奪われて息抜きなしになる

総務省統計局の平成29年就業構造基本調査によれば、過去1年間に介護や看護のために離職した人は99,000人となっています。

そのうちの75,000人が女性で、全体の75%以上を占めているんです。

築き上げてきたキャリアを手放し、収入源を断たれ、家に籠もって介護に専念することを求められる女性が多数いることが分かりますね。

自分の能力向上のためだったり、子どもが理由の場合の離職は受け入れられても、なんの報酬も労いも受けられない義理母の介護はなかなか受け入れられないというのが正直なところ。

ちょっとした息抜きさえなく、趣味や娯楽の時間もゼロとなるケースが多い介護は容易に受け入れられるものではないですね。

【参考】平成29年就業構造基本調査の結果|総務省統計局

夫の無理解

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辛いことがあったら誰かに話して共感してもらったり、慰めてもらったりしたいですよね。

義理母の介護となれば、実の子である夫だって協力するのが当然です。

しかし、多くの場合「仕事が忙しい」「女の方が向いている」などを理由に、介護を一切手伝わないどころか、妻に労いの言葉をかけることもなく、果ては自分の時間を謳歌している夫が多くいます。

「自分の親の世話を人に押し付け、人の人生犠牲にして、なんであなたは遊ぶ時間があるの?」

そんな不満を妻が抱くようになっては介護がうまくいく訳がありません。

夫にとっては実親でも、妻にとっては義理の親。

「当然のように世話してくれる人」ではない、ということを肝に銘じておいて欲しいですね。

妻と義理母の心の行き違い

非常に多いのが、妻と義理母の心に行き違いが生じることです。

妻がよかれと思ってやったことや、一生懸命尽くしていることが義理母にとって嬉しいことでなかったり、「足りない!」と感じてしまったり「それは違う!」と叱責するようなことになると、介護は上手くいきません。

介護に限りませんが、片方が相手になにかを過剰に求めたり、お互いが萎縮してもうまくいきませんよね。

上手に気持ちを伝え合えればいいのですが、プライドがあったり、性格だったり、認知症などの病気が理由で心無い言葉を口にしてしまうこともしばしば。

最も辛いのは、妻が一生懸命介護をしているけれど、義理母が認知症で物事を違った風に捉えてしまい、そのことを周囲の人に言ってしまうケース。

周囲の人が妻に理解を示し、認知症に対する知識があればいいのですが、認知症で正しく物事を捉えられていない義理母の言うことを信じて妻を責めたりすると、自体は劇的に悪化!

妻が心身を病んだり、介護の一切を放棄したりするケースもありますよ。

義理母の介護で離婚問題勃発

夫にとっては衝撃的かもしれませんが、義理母の介護が原因で離婚する家庭もあります。

もともと嫁姑が不仲で、妻ひとりが息抜きもなく介護を担っており、夫も無理解だった場合は、しばしば離婚問題に発展!

そもそも、妻にとって義理母は赤の他人。

夫という存在でしか繋がっていないのに、自分の時間を全て捧げるような介護をしなければならない上、義理の親を介護しても妻には相続権がなく、金銭的にも精神的にも報われません。

ただただ何年も労働力を搾取されるだけなら「夫という繋がりを断とう」と考えてしまっても当然でしょう。

離婚では子どもの存在が大きな枷になりますが、子どもが自立できる年齢になっていれば枷もなし!

今は年齢が高くなっても働くことができますし、離婚する夫婦も珍しくありませんから、介護を放棄するために離婚を選ぶ妻が居ても不思議ではありません。

介護で家族関係が壊れないための対策

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義理母の介護で家族関係が壊れてしまうというのを避けるには、介護が始まる前から手を打っておく必要があります。

介護問題で辛い経験をしないためには、次のような対策を早くからとるようにしましょう。

介護・金銭などに関する終活をしっかりしてもらう

一番大きい対策は「義両親に終活をしっかりしてもらう」という方法です。

今は終活という言葉が広く浸透しており、生きているうちに介護や相続などについて考えておくことが一般的になってきています。

認知症や病気になる前に将来介護を受ける立場になる人自身が子どもや友人などの忌憚のない意見を聞いて介護について考えておくことは非常に大切!

筆者の場合、両親・義両親ともに70歳を超えていますが、現在、終活の真っ最中!

義理父は介護認定を受けたこともあり、終活に一層力が入っているようです。

妻から義理両親に話題を切り出すと角が立つことがあるので、夫から終活を勧めるようにしましょう。

終活に関するセミナーや書籍がありますし、インターネットでも終活に関する情報は集められます。

正月やお盆など、多くの親戚が顔を合わせる時に話題にするのもひとつの手ですね。

介護認定を受けてケアマネージャーなどの協力者を作る

介護が必要になったら、必ず介護認定を受けましょう!

介護認定を受けると、リハビリや身の回りの世話をプロの手を借りて行うことができますし、介護用品を準備する費用も補助が出ます。

介護が要らなくても体の状態によっては「要支援」という認定を受けることができ、必要な援助を受けられます。

今は「介護=妻が一人で全部やる」という時代ではありません。

介護制度を活用し、プロの手を借りながら「介護を受ける本人に必要最低限の援助をする」という形に変えていきましょう。

介護の度合いを低くしていく努力

介護が必要になったら一生、ずっと介護し続けなければならない、と思いがちですよね。

しかし、それは間違い!

例え一生介護が必要でも、介護の内容を軽くすることは可能なんです。

特に、介護を受ける方の年齢が比較的若い場合はリハビリやケア次第では、要介護の度合いが軽くなることだってあるんですよ。

最近では「視線を合わせて会話すること」や「触れ合う」といった知覚や感情、言語が介護を受ける人にとってプラスの効果があり、場合によっては要介護の度合いが軽くなることもあると言われています。

【参考】ユマニチュード入門(著者:本田 美和子)

介護をする側の努力だけでなく、介護をされる側にうまくアプローチをして生きていく力を引き出し、介護の度合いを低くしていく努力も必要なのです。

デイケアや介護施設を利用する

介護というと、在宅介護ばかりに目が行きますが、デイケアや介護施設を活用すれば、介護する人の負担が減り、介護される人も外へ出る機会や、様々な体験をする機会が得られます。

要介護認定を受ければ利用できるサービスを教えてもらえたり、複数の施設を安価で利用できるので、介護認定を受けて利用できるサービスを活用しましょう。

介護の度合いによって利用できるサービスも変わってきますから、介護が必要になった時はもちろん「最近、できることが減ってきたんじゃないかな?」と感じた時もケアマネージャーなどに相談してくださいね。

夫は「親か妻か」真剣に考えておくこと!

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義理母の介護の問題は嫁姑間の問題と思われがちですが、夫の責任も非常に大きいことを忘れてはいけません。

義理母の介護が現実問題となった時、夫は「親を選ぶか、妻を選ぶか」二択を迫られることを覚悟しておきましょう。

親を選んだ場合は、離婚で妻と子どもと分かれることになり、自分が天涯孤独の身になる可能性を理解しておきましょう。

ただし、妻を選ぶ=自分の親を捨てる、ということではありません。

介護は「できる範囲で行う」というのが今の常識!

利用できるサービスをフル活用し、できる限り多くの大人の手で介護をして、介護を受ける人にも「介護の度合いを減らす努力を求める」ということを忘れないようにしたいですね。

例え長男の嫁でも妻に介護の義務はない!

よく「長男の嫁には親を介護する義務がある」と言われますし、それが当然と考えている年配者がいます。

しかし、それは間違い!

長男の妻であっても介護の義務はありませんし、妻が介護をしなくても法的に問題はありません。

「扶養の義務があるでしょう!」と思われるかもしれませんが、扶養は「可能な範囲」というものであり、絶対ではないんですよ。

つまり、生活に余裕がない場合や時間がない場合は扶養の義務は負う必要がありません。

ましてや、介護の義務というものはないんです。

昔は長男が家を継ぎ、長男の妻が親の世話をする風習がありましたが、それも「初老とは40歳のこと」と言われていた時代の産物。

各家庭の平均年収が少なく、子どもの教育費も多く必要になる上、女性の平均寿命が87歳、男性の平均寿命が81歳を超えるという今の時代、長男の嫁が介護する!というのは全く合わない話ということを頭に入れておきたいですね。

介護義務はないが、介護した妻には金銭を請求する権利がある

妻に義理母を介護する義務がない、ということを紹介しましたが、妻が介護をした場合、金銭を請求する権利が認められるようになりました!

これは、平成30年7月に民法の相続に関する部分が大きく改正されたことが理由です。

これまでは、義両親を介護しても妻には相続権がなく「介護をしていない義弟や義妹に相続権があって金銭的な利益があるのに、介護した人がなにももらえないのは不公平!」という声が多数あがっていました。

そうした声を受けて民法が改正され、財産を相続した義弟や義妹に妻が費用を請求する権利が認められました。

今回の改正でも妻には相続権がありませんし、実際にいくらもらえるのか、というのは決まっていませんが、請求を義弟や義妹に突っぱねられたとしても家庭裁判所に申し出ることで請求が可能に!

介護をする妻という立場の方は絶対に知っておきたい権利です。

【参考】約40年ぶりに変わる“相続法”!相続の何が、どう変わる?|政府広報オンライン

まとめ

義理母の介護を妻が行うのは上手くいかない例が非常に多く介護から逃れるために離婚するという例も珍しくありません。

介護で家庭が崩壊しないためには、介護を受ける立場の人が終活を行って介護などについて考えておくことが必要不可欠です。

また、プロの手を借りたり、必要な介護の度合いを低くする努力や、夫の妻に対する気遣いも欠かせません。

介護をした妻に認められた金銭を請求する権利も忘れず、介護は多くの人の手で無理なく続けられる範囲で行うという考えを皆が持つようにしたいですね。